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介護離職とマネープラン

介護で離職するとマネープランはどれだけ痛む?
介護は介護する側の問題と、される側の問題があります。
今回は親などを介護するために離職した場合を想定した、「する側」のお金の問題を整理してみます。

お金の心配で考えられる主なことは、
(1)介護する側、される側の介護費用を含めた月々の収支は大丈夫か?
(2)辞めてしまっても自分の老後の費用は大丈夫か?
ではないでしょうか。ただ、当面の問題の大きさに押され、お金については介護が終わり一息ついた遠い先のこととして「なんとかなる」もしくは「なんとかするしかない」と思考を一時停止してしまうこともあると思われます。

今回は辞める・辞めないを判断する前提として知っておいて欲しい、(2)の自分達の老後資金となるはずのお金がどうなるかに焦点をあてていきます。計算はシチュエーションに基づいてわかりやすい仮の数字を使用しています。個々の状況にあわせて考える際の情報整理方法の参考としてください。

ベテラン社員が退職した場合
現在55歳で年収600万円のベテラン社員が離職した場合の金銭的損失を3つの点から整理してみましょう。妻も正社員として働いており、年収は400万円。子供が二人いると想定します。
シチュエーションとしては、55歳で介護離職した後、父母の相次ぐ介護で8年間介護を行い、終了後は再就職しなかったと想定します。

(1)将来の貯蓄可能額の喪失
仮に可処分所得から生活費などを除いた現在の貯蓄ペースが年150万円だったとします。介護期間8年というと終了する頃は63歳です。もし勤め続けていた場合、実際には60歳後の再雇用等で年収が下がり、そこまで貯蓄できないこともあると思われます。一方で子供の学費負担が終了したり、住宅ローンが終わるなどして生活関係費が軽減されることも想定されます。差し引き平均して仮に離職せず65歳まで勤め続けたとしたら年間平均100万円貯蓄が可能だとすると、介護離職でそれが無くなった場合の10年間の喪失額は1,000万円となります。

(2)現在の貯蓄の減少
夫婦の収入が妻のみの収入となるため、生活費や学費は貯蓄からも捻出することになります。
生活費は一般的には収入が減るとなると圧縮を図りたくなるところですが、親の介護という特殊事情がある状況では抑えるどころか、親宅への移動や介護費用などでむしろ増加する可能性を考えておく必要があります。
とはいえ住宅ローンの終了や子供の独立後は生活関係費が軽減されると仮定し、年間の赤字額=貯蓄から取り崩す額は200万円であったとします。学費は子供二人分として今後300万円とします。
収入が半減した状態で生活を維持しながら介護を行う場合、貯蓄から捻出する額は、生活費2,000万円+学費300万円=2,300万円と高額です。

(1)と(2)だけでも既に3,300万円の金銭的ダメージがあることから、夫であれ、妻であれ、あるいはおひとりさまであれ、働き盛りの人が介護で離職する痛手が大きいことがわかります。
一方、男性が介護離職を想定する必要性は小さいのでは?といった疑問がわくかもしれません。しかし厚生労働省の平成 28 年雇用動向調査によると、55歳~59歳の男性一般労働者の介護・看護を理由とした離職率は、まだ少ないものの、前年比では増加している現状があります。昔であれば妻が夫の親の介護も担う形が多かったようですが、現在は自分の親は自分で…という流れもあります。男性が介護を理由に離職を検討するケースもあると考えておいたほうが良いでしょう。

(3)公的年金の減少
最後に忘れてはいけないのが公的年金の喪失分です。
会社員等の年金は厚生年金と国民年金の2階建てとなっており、老齢厚生年金の額は給与額と勤務期間で決まります。つまり、原則として給与が少なければもらえる年金が少なく、多ければ年金も多くなるということです。同時に、同じ給与でも期間が短ければ年金は少なく、長ければ多くなります。収入と期間を積み上げることで年金が決まる点を踏まえて介護離職の影響を整理すると以下のようになります。

年収600万円の設定ですが、もし勤務を続けていた場合にどのような年収推移となるかがポイントです。仮に60歳以降は定年後の再雇用で65歳まで働き年収が300万円になるとします。
55歳からの10年間の収入に対する老齢厚生年金の額は約23万円/年です。念のために付け加えると、10年分の収入に対する年金額ですので、これだけしか老齢厚生年金がないというわけではありません。55歳までの30数年分の積み重ねについては既に獲得したものですから、介護で離職してもほぼ影響がないため、影響がある「その後」の額のみピックアップして整理しています。

国民年金は55歳で離職後、60歳まで第1号被保険者として自分で保険料を払う必要がありますが、介護で離職するほど大変な状況では、国民年金の手続きをうっかり忘れたり、保険料負担が厳しいため未納にしてしまう恐れもないとは言えません。今回はうっかり忘れてしまった、というケースで喪失額を考えてみます。
5年間国民年金を払わなかった場合の老齢基礎年金額への影響は約10万円/年です。

老齢厚生年金と老齢基礎年金を合わせて年間約33万円が、離職した場合に減ってしまう年金額です。例えば65歳から90歳までの25年を考えると825万円の喪失です。逆に言えば、勤め続けていればそれだけ年金が増えていたということです。

(今回のケースは妻も正社員ですが、もしも妻が第3号被保険者だった場合は二人分の保険料負担が発生します。共にうっかり忘れてしまっていた場合、年金の影響は妻にも及びます)

事例のベテラン社員が介護離職した場合の喪失額は4,125万円
ここまで述べてきた55歳で介護離職した場合の影響を3つのポイントにまとめると以下のようになります。

(1)将来の貯蓄可能額の喪失…1,000万円
(2)現在の貯蓄の減少…2,300万円
(3)公的年金の減少…825万円

介護で離職してしまった場合、本来なら貯められたはずの貯蓄、減らないはずだった貯蓄、得られるはずだった年金を合計すると4,125万円となりました。実際にはさらに退職金の減少もあるでしょう。それでなくても老齢期を前に貯蓄を増やしておきたい時期ですが、逆にかなり資産を減らしてしまうリスクがあるということです。
また、今回は年収600万円としましたが、たとえ収入が少ない方でも、3つのポイントを考えると数百~数千万円規模の影響は生じると想定しておく必要があります。

おひとりさまこそ離職した時のリスクが高い
兄弟姉妹の中で未婚の人や既婚でも子がいない人は、子がいる世帯と違って身軽だから…と離職の影響の深刻さを軽く認識しがちです。しかし、子がいないからと安易に離職すると、上記のように老後資産形成が非常に心もとなくなります。
ご自分がおひとりさまの場合、辞めないという意思をしっかり持つことが大切になります。また、もしもおひとりさまの兄弟姉妹に離職してもらった場合、周囲の兄弟姉妹は離職した人の老後資産を穴埋めサポートすることも必要かもしれません。

※公的年金額は平成30年度の額を元にした概算です。

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